第42回 未来は本質的に予測不可能である


成功する長期投資家は、皆さん「未来は本質的に予測不可能である」という強い信念を持っていらっしゃると思います。なぜならこの信念は投資の成功にとって、とても大切な信念だからです。

「未来は分からない? そんなの当たり前やん!」

と、思われますでしょ? しかし現実には、このことを(本当には)理解出来ていない投資家はすごく多いと思います。そしてそれが彼ら彼女らの運用成績に悪影響を与えてしまっている。

もちろんディトレードやスィングトレードが得意な人は(存在確率はすごく低いと思いますが)確実にいらっしゃいます。その様な人は並外れた洞察力によって統計学上有意な頻度で短期的な未来予測を的中させて儲けに繋げてらっしゃいます。

しかし、長期ともなればもう無理です。それは純粋に論理的な観点から見て「偶然」の積み重なりがあまりにも巨大になり過ぎるからです。

「未来は予測不可能である」というテーゼには、次の二つの異なる考え方があります。

①不可知性のため

②物理学的に未来は決まっていないため

①「不可知性のため」とは、未来は本当は決まっているけど、私達の認識能力の未熟さ・限界ゆえに知ることが出来ない、とする考え方です。言わば「神様は全てご存知だけど、何も教えてくださらない」という感じです。あるいは何か天才的な人なら予測が(もしかしたら)可能かも知れないと(ほんの少し)期待する考え方です。

② 「物理学的に未来は決まっていないため」とは、前もって決まっている未来など、そもそも純物理学的にあり得ない、とする考え方です。これは現代の素粒子物理学から導かれます。言わば「この宇宙を創造された神様は、みずからのご意志で、神様ご自身にすら(たとえ百兆分の1秒先の未来と言えども)完璧には予測できないように、この宇宙を設計された。そのように宇宙を創造すべく『神の数式』を書かれた」という理論物理学者のような考え方です。

そして(他の投資家の皆さんのお考えは分かりませんが)私は考えは後者②です。

たとえば、もしもタイムマシンで昨日に行けたとした場合、株価は最初に体験した昨夜の株価と、タイムマシンで戻った昨夜の株価とでは微妙に(あるいはかなり)違うチャートを描くであろうと私は予想します。過去に戻った時のありとあらゆる初期条件がパーフェクトに、それこそ完全無欠に同じであったとしても、その後に発生する天文学的な数の量子論的ゆらぎの累積により、必ず結果は(もしかしたらかなり大きく)異なるはずです。

さてさて、大袈裟に論を展開してきましたが、以上の考察は、実は投資の成功にとても重要な考え方に繋がると私は思っています。

「未来は本質的に予測不可能である」このテーゼが、私達が長期投資で成功するために教えてくれる大切な教訓とは一体何か?

まず第一に『投資は確率論で考えなければならない』という教訓です。未来予測とは(その性質上)あたかもテストで正しい回答を答える行為に似ています。言わば「正しいか間違ってるか」「当たるか外れるか」です。しかし投資とは正解を見つける作業ではありません。正解を見つけようとするのではなく(なぜなら未来は予測不可能だから)確率的に最も期待値の高い行動を見つける作業です。

第二に「世の中の経済についてのニュースや経済評論家の意見、経済予測とは、一定の距離を保ちなさい」という教訓です。彼らの情報を、参考にするくらいならいいけど「決して過剰に反応するな」「決して心を乱されるな」ということです。

私たちインデックス長期投資家の運用成績が悪化するのは「未来予測を無視した時」ではありません。当たらないのが当たり前である「未来予測に振り回されて愚かな行動を取ってしまった時」のみです。

直近の世間を見渡してみても、よく分かりますよね。過去1年ほどの間でさえ、市場の一時的な下落やその時にネットに出回る「不吉な未来予測」に振り回されて、あるいは乗せられて、愚かにも損切りしてしまった投資初心者は大勢いたでしょう?

「未来は本質的に(誰にも)予測不可能である」肝に銘じましょう。投資はすべて確率で考えましょう。自分にとって最も期待値の高い投資行動を考え見つけましょう。ネットに氾濫する当たらない未来予測などに決して振り回されないようにしましょう!とりわけ株式投資についての『とっておき情報!』はすべて詐欺、あるいは詐欺的な罠、あるいは詐欺ではないけどその情報を出している人がそもそも馬鹿である、とくれぐれもしっかり認識しておきましょう!

(文: UEDA / 挿絵:αβγ)


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