『相続税対策としての不動産投資』は悪手である。これが私の結論です。以下にその理由をご説明いたします。
2020年頃、私はお付き合いのある地元の銀行の支店長さんから、不動産投資を勧められたことがあります。この不動産投資案件の目的は、私の父親(この時はまだ存命でした)が所有する財産の相続税対策でした。
このお誘いについては(支店長さんが説明された節税スキームを充分理解した上で)結論として丁重にお断りしました。この時、当時の支店長さんに私が申し上げた「お断りの理由」は以下の通りです。
①「不動産投資は、太古の昔からお金持ちの王道でした。そして遠い先の未来に至るまでも王道であり続けることと私は思います。」
②「しかしながら私は自分が不動産投資に向いていない事を知っています。とりわけ不動産投資は投資というよりビジネスです。事業です。事業を成功させるには、その事業についての深い知識が必要なのはもちろん才覚だって必要です。」
③「たとえば支店長さんが、いきなり私の仕事(私の事業)を引き継げと言われて、果たしてすぐに引き継げるでしょうか?」
④「もちろん優秀な支店長さんのことです。やがては引き継げる能力を獲得されることでしょう。しかし、そこに至るにはそれなりの歳月、それなりの修行期間が必要なはずです。」
⑤「もしこのような修行期間も無しに、いきなり私の事業を引き継いだとしたら、いきなり経営者になったとしたら、一体どうなるか? これがいかに危うい事であるかは、融資のベテランである支店長さんならお分かりだろうし、私の意見にきっと激しく同意してくださるでしょう。」
⑥「もともと不動産投資が得意な人なら、おっしゃる「相続税対策」は、とても優れた手段としてワークすることでしょう。しかし不動産投資のしろうとがそのスキームに手を出せば、あまりハッピーな事にはならないと私は思います。」
⑦「以上の理由によって結論『相続税対策のための不動産投資は悪手である』と私は考えます。」
以上が、私が当時の支店長さんに申し上げたお断りの理由です。もともと不動産投資が得意な人を除き『相続税対策のための不動産投資』は悪手です。しかも一度実行してしまうと、巨額のローンを組みますから、引き返すことが出来ません。結果、せっかく長年の努力によって大きな資産を築き上げられたのに、悠々自適どころか、残りの人生のほとんどを(相続税対策のための不動産の)ローン返済のために大家として働き続けざるを得ないハメに陥る可能性が極めて高い!と私は考えます。
特に、これからは人口減少社会に入ることがはっきりと分かっています。このため、とりわけ「地方の不動産の需要低下」=「無価値化」が進行せざるを得ません。今という時代の流れ的にも、これからの日本において(都心の一等地を除いて)不動産投資はますます難しくなる、というのが私の見立てです。
(文: UEDA / 挿絵:αβγ)
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