第98回 株式の保有比率が20%前後の人に起こる不都合な真実


あなたが持つ全ての金融資産の中で、株式やゴールドなどのリスク資産が占める割合はどれくらいですか? 私 UEDA みたいに 99.8%以上(事実上10割)である人は、たぶんほとんどいらっしゃらないでしょう。

今回は、ご自分の資産全体に占める株式の比率が低い(たとえば20%前後くらいの)人に起こる不都合な真実について解説したいと思います。

さて今仮に、あなたのアセットアロケーション(資産配分)が次のようであると仮定します。

株式(S&P500やオルカンなど)20%

現金(銀行預金や郵便貯金など)80%

20%もの比率で株式資産を持てている人は、今の日本社会を見渡してみてもそれほど多くはいません。だから、あなたはかなり優秀な人だと思います。

しかしながら私にひとつ言わせてもらえるなら、このアセットアロケーションだと、あなたが将来お金持ちになるのは(もしかしたら)なかなか難しいかも知れません。

この理由を分かりやすく説明するために、あなたの資産全体の実質成長率が、具体的に一体全体どれくらい期待できるのかを今から実際に計算してみましょう。(ちなみに以下の議論と計算に出てくる成長率とは、すべて年率であるとします)

仮定その1

まず、あなたの株式資産(S&P500やオルカンなど)の長期的な名目成長率を仮に 10%と仮定しましょう。そして長期的なインフレ率は 2%と仮定しましょう。

すると、あなたの株式資産の長期的な実質成長率は、

10 – 2 = 8

つまり プラス 8%です。

一方で、あなたの現金資産の実質成長率は(インフレ率が 2%なので)マイナス 2%です。

以上の数値をもとに、あなたの資産全体の実質成長率を計算すると、、、株式は資産全体の 1/5 だし、現金は資産全体の 4/5 だから、

(8 × 1/5)+(-2 × 4/5)= 1.6 +(-1.6)= 0

なんと! あなたの資産全体の実質成長率は 0%でした! これはかなりショッキングな結果ですよね。

仮定その2

最近の株式市場の好調さを反映して、株式資産の名目成長率( = 値上がり率)を 15%と仮定してみましょう。これは過去1年間の S&P500 の値上がり率とほぼ同じです。そしてインフレ率は 3%と仮定してみましょう。これは 2024年の実際のインフレ率です。

この場合、株式資産の実質成長率は、

15 – 3 = 12

で、実質 12%です。

現金資産の実質成長率は(インフレ率が 3%なので)マイナス 3%です。したがって、この場合の資産全体の実質成長率は、

(12 × 1/5)+(-3 × 4/5)= 2.4 +(-2.4)= 0

なんと! やはり実質成長率はゼロでした!

仮定その3

もしも、株式資産の長期的名目成長率が仮定その1の数値(10%)になり、しかも長期的インフレ率が仮定その2の数値(3%)であったなら、、、少し怖いけど勇気を出して計算してみましょう!

株式資産の実質成長率は、

10 – 3 = 7

で、プラス 7%になります。現金資産の実質成長率は(インフレ率 3%だから)マイナス 3%。したがって資産全体の実質成長率は、、、

(7 × 1/5)+( -3 × 4/5)= 1.4 +(-2.4)= -1

なんと! 株式が資産全体の20%あるにも関わらず、あなたの資産全体の実質成長率はマイナス1%となってしまいました! これでは時間が経てば経つほど、あなたの今ある資産は(額面は見かけ上増えますが)実質価値は減り続けることになります。つまり限りなく、あなたは確実に貧乏になって行くということです!

これこそが、株式比率が低い人(たとえば20%前後、あるいはそれ以下の人)に起こる不都合な真実です。

さて、あなたがもし新NISA での積み立てを月30万円満額できているのなら、それは無条件に素晴らしいことです。それが出来ている人は今の世の中を見渡しても極めて少数派です。あなたはとても優秀な人だと言って間違いありません。それでも、もしも今ある銀行預金の金額が大き過ぎて、現状では株式比率が全体の20%程度(あるいはそれ以下)しかない場合は、銀行預金部分のインフレによる価値喪失が大き過ぎて、株式部分の成長ではその損失が充分補いきれていない可能性が大です。これは由々しき事態です。

なら一体全体どうすればいいでしょうか?

とりあえず新NISA とは別に、特定口座(課税口座)で株式を買って全体としての株式比率を高めるしかありません。どれくらい高めれば良いかはその人のリスク許容度や考え方にもよるので、これはご自分と対話してご自分で決める必要があります。しかし少なくとも私が上で実行したような計算によるシミュレーションは必ずやってみましょう。

いろんな数値をご自分なりに仮定してみましょう。そして何度もシミュレーションするのです。何度も何度も計算してみるのです。するとアセットアロケーション(資産配分)と、資産全体のパフォーマンス(実質成長率)との関係が、なんとなく立体的に把握・理解できるようになります。

以上、大インフレ時代の今、株式比率が2割程度ではまったく不充分である理由がお分かりいただけましたでしょうか? 正直ショッキングな内容だったかも知れませんね。でも以上のような真実を知らないままでいると、「株式部分の運用成績が良いから」と油断して「自分はちゃんと資産運用できている!」=「資産を増やせている」と錯覚してしまい、貴重な投資期間を長期に渡って無駄に失ってしまいかねません。そのような事態こそ真に悪夢です。失われた時間は取り返しがつかないからです。

しかし、以上のような真実をあなたが理解することによって、もしもあなたが賢明さと(何よりも)勇気をもってご自分の資産のアセットアロケーションを改善することが出来たなら、つまりあなたの未来の真の資産増大に今回の私の記事が(微力ながらも)貢献することが出来たなら、それは私にとってすっごく光栄なことだし、とっても嬉しいことです。あなたのご健闘と未来の富裕層必達を心よりお祈りいたしております。

(文: UEDA / 挿絵:αβγ)


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