第103回「リスクを抑える」という行為が持つリスク


アセットアロケーション(資産配分)において、「株式比率が高すぎるから、もう少し下げてリスクを抑えた方がいいんじゃないか?」みたいなもっともらしい意見を耳にすることがあります。この意見の妥当性については、もちろんその資産の所有者の事情、性格によりますから一概には論評できません。

しかし、中には「ファイナンシャル・プランナーがそう言ってるから」というだけの理由で、たとえば「『株式50% – 債券50%』のほうが、攻めと守りと両方兼ね備えられていてちょうど良いのだ」みたいなステレオタイプのふざけたアセットアロケーション観を信奉し、他人に薦めよう、あるいは押しつけようとする困った人々もいます。もちろん、その資産からの支出がもし近々予定されているのなら、その支出タイミングによってはその分を現金(銀行預金)や債券などにしておく合理性は確かにあります。

でも、もしそうで無いのなら、株式比率を落とす行為は長期的パフォーマンスをただ単に落とすだけの行為であり、資産形成における目標達成時期を(冗談では済まないくらい)遠い未来に押しやってしまう所業です。つまり、お金そのものよりも大事とさえ言える『人生の時間』を無駄に失ってしまう所業なのです。

「FPが言ってたから」みたいな思考停止にも等しい浅はかな根拠によってリスクを抑えようとする行為は、ゴールまでの時間的距離をいたずらに遠ざけ、同じ期間内なら到達可能な資産額をいたずらに圧縮するだけの最も愚かしい行為であると知ってください。

「リスクを抑える」という行為が持つとんでもないリスクを決して侮(あなど)ってはなりません。

(文: UEDA / 挿絵:αβγ)


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