第108回 株式1億円分を持つ人と銀行預金1億円を持つ人。


金融資産1億円。これは NRI(野村総合研究所)が定義する『富裕層』の条件を満たす最低金額です。多くの資産形成ガチ勢にとって憧れの、そして大きな目標となる資産額だと思います。

しかしながら(皆様すでにご存知だとは思いますが)問題はその中身です。株式1億円分を持つ人と、銀行預金1億円を持つ人。この両者の間には(同じ金融資産1億円と言っても)正に天と地ほどの差があります。

仮に、ある人の全金融資産が1億円であると仮定します。その中身を株式100%として持つのか、銀行預金100%として持つのか。この両者は、資産を保有する人間としての中身あるいは投資家としての質がそもそも丸っ切り違います。また、その後の運命も全く違います。

第一に、銀行預金1億円を持っていたとしても、この人は(私UEDAが定義する)お金持ちではありません。なぜなら銀行預金1億円がもたらすわずかな利息だけでは到底生活できないからです。

第二に、銀行預金1億円は(ロバート・キヨサキ氏が定義する)資産ですらありません。なぜなら2026年1月現在、銀行預金の金利よりインフレ率の方が遥かに上回っているために実質価値は減り続けるからです。「負債とは、あなたのポケットからお金を抜き取っていく物」であるとのロバート・キヨサキ氏の定義に従えば「銀行預金1億円は(世の中のほとんどの人々の直感に反して)資産でないどころか負債ですらある」とも言えます。

いくら NRI の定義上富裕層に分類されようが、所有する全金融資産が銀行預金1億円のみである人は、私の定義からすればお金持ちではないし、ロバート・キヨサキ氏の定義から見ても資産を全く持たず負債しか持っていない人です。そしてこれらの厳然たる事実は、この人のその後の運命にてきめんに容赦なく大きく影響し、極めて好ましくない現象として現実に現れます。

銀行預金1億円のみを持つ人の未来はどうなるでしょうか? まず、仮にこの人が一切取り崩す事なく頑張って積立預金を続けたとしても、その新たな積立はことごとくインフレで食い潰されるでしょう。世の中のインフレ率がもしも3%(2024年の実際のインフレ率)ならば1億円の銀行預金が1年間で失う実質価値(購買力)は年間300万円です。つまり年間積立預金額が300万円を下回っているなら、この人の財産は(1円も取り崩していないにも関わらず、それどころか頑張って積み立て預金し続けているにも関わらず)減る一方です。こんな馬鹿馬鹿しい状態を無神経に放置し続けて、本当によいのでしょうか?

一方、株式で1億円分を持っている人はどうでしょうか? 仮にこの人の株式の中身が米国株インデックス例えば S&P500 ならどうなるでしょう? もちろん株式ですから単年で見るとマイナスの年も普通にあり得ます。暴落する事だってあります。しかし大切なのは長期的にどうなるかです。過去70年間の平均年率リターンである 10.7%を採用すると、株式1億円分がもたらす長期的平均リターンは年間 1070万円です。インフレ分を差し引いても年間 770万円が(何もしなくても勝手に)増えることになります。

株式で1億円分を持っている人が、もしも毎月給料の範囲内で生活したなら(つまり株式資産を取り崩さなかったなら)この人の資産は複利で膨張し続けることになります。そして10年後には(平均年率10.7%で単純計算すると)名目(額面)2億7636万円にまで増えることになります。このレベルなら、もしも人生を楽しむために多少取り崩しても(よっぽど酷い取り崩し方をしない限り)資産全体は半永久的に増え続けるでしょう。

以上、株式1億円分を持つ人と、銀行預金1億円を持つ人。この両者の間には、同じ金融資産1億円と言っても、その後の未来においてそれこそ天と地ほどの途轍も無い大差が開く。しかも時間の経過とともにますます加速度的に差が開き続けるというシンプルかつ明解なロジックがお分かりいただけましたでしょうか。

(文: UEDA / 挿絵:αβγ)


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