第96回 成功する投資家に本当になりたいなら


成功する『株式長期投資家』に、あなたが本当になりたいのなら、自分の育て方(自己育成)についての根本的な大方針を間違えないようにしなければなりません。根本的な大方針とは全体としてのご自分を育てる努力の方向性のことです。 

たいていの人は「成功する投資家になるために」知識を得ようとします。もちろん知識を得ることは良いことだし絶対に必要なことでもあります。私自身も投資初心者の頃は貪欲に知識を集め吸収し学びました。今もリアルタイムで新しい知識を集め学び続けています。

しかし、とりわけ初心者の時に最重要な肝腎要(かんじんかなめ)は、実は別にあります。

「知識を得る」とは、いわば自分に無い物をプラスする行為ですよね。でも最初に絶対必要な最重要事項とは「今無い必要な物をプラスすること」以上に「今ある有害な物をマイナスすること」です。

ホモ・サピエンス(すなわち私たち人類)は、『お金についての愚かさ』の種子をたくさん抱えた状態でこの世に生まれてきます。なぜそうなのか理由は分かりません。敢えて言うなら、数百万年に及ぶ原始時代における人類の遺伝子の進化の過程の結果としか言いようがありません。

多くの人々は「今ある有害な物」=「お金についての愚かさ」を放置したまま新しい知識を得ようとします。そして書籍やネットを通じて数多くの知識に出会い理解し憶えます。その過程で運よく「愚かさ」を脱却していく人も、もちろんいらっしゃいます。しかし、少なからぬ人々が「愚かさ」を捨てきれずに投資についての単なる『物知りさん』になってしまいます。この投資についての『物知りさん』は割とたくさん世の中にいらっしゃるのではないでしょうか。

彼ら「物知りさん」の多くは(必ずしも)投資で大きく儲けられているわけでもないし(必ずしも)お金持ちなわけでもありません。なぜでしょう? それは彼ら彼女らが、生まれてから現在まで持ち続けてきた有害な物すなわち「お金についての愚かさ」を、強い意識をもって退(しりぞ)ける努力をしていないからです。

だから、まずは自分の心の中に巣くう有害な物を、意識して取り除きましょう。一番大切なことは「自分の場合は、どのような時に愚かさが発現しやすいのだろう?」と、ご自分に問うことです。

たとえば、直感と合理性が対立するとき、まさに愚かさが「そこにある」のです。

一例をあげます。2024年1月から新NISA が始まり、このタイミングで初めて積立投資を開始する人が激増しました。実に喜ばしい限りです。しかし 2024年から 2025年にかけて(証券会社の推計によると)投資家の数がなんと約 100万人も減ったそうです。要するにトランプ関税ショックなどで市場が急落した時に、怯えて損切りしてしまい、株式市場から退場(脱落)してしまったということです。

脱落してしまった人々は何が問題だったのでしょう? 彼ら(彼女ら)は、目の前にあるご自分の証券口座の資産額が急減するのを目の当たりにした時、原始的な直感に従ってしまったのです。「早く逃げろ!」という魂の奥底から響いてくる原始の叫び声に抗しきれなかったということです。これこそが「お金についての愚かさ」=「マイナスすべき今ある有害な物」のひとつです。

ちなみに、株式市場が急落すると「マスコミは必ず阿保な記事を書く」という大原則をしっかりと覚えておいてください! マスコミは市場が急落すると、たとえば「米国株の化けの皮がはがれ始めた」とか「株式市場の終わりの始まり」とか、とにかく投資家の不安を煽るような見出しの記事を思い切り書きまくります。彼らマスコミはなぜ、そんな(投資初心者を株式市場から脱落させてしまいかねない)大迷惑極まりない記事を書くのでしょうか?

答えは簡単、人々の不安を煽る記事が一番クリックされやすく、つまりPV( = Page View)を稼ぎやすいからです。株式市場だろうが、金市場だろうが、ビットコイン市場だろうが、彼らマスコミにとって「市場の急落」とは大量の PV を稼ぐ絶好のチャンス! 美味しい稼ぎ時なのです!

さて、「お金についての愚かさ」には、他にもたくさんの種類がありますが、この記事ではもうひとつだけ挙げておきましょう。それは「お金持ちになることを急ぐ」です。「焦(あせ)る」と言い換えても良いでしょう。

この愚かさはかなり恐ろしいです。なぜなら数多くの知能指数が高く優秀な人々が、この愚かさによって破滅するからです。この愚かさに対抗するためには、他人と自分とを比べる事をやめることです。

人は人。自分は自分です。

資産形成は競争ではありません。過去の自分より今の自分、今の自分より未来の自分。比較するのはあくまでも過去・現在・未来の自分自身です。他人と自分を比較して勝とうとする競争意識は、「資産形成」にとって極めて毒性の高い有害物です。

故チャーリー・マンガー氏(※1)がかつて指摘した通り、せっかく順調に資産を形成できていた人が、ある日偶然、同僚の予想外に大きい資産額を知って焦ってしまい、追いつこうとすると悲劇の可能性が爆上がりします。彼らは追いつく手段として、たいてい信用取引に手を出すことになります。それも身の丈を大きく越えたレバレッジをかけて。つまり巨大な借金をして自己資金の何倍ものポジションを持って一発逆転を狙うのです。

市場は(極めて根源的な次元において)予測不可能です。レバレッジを使った取引は破滅への最短ルートです。故チャーリー・マンガー氏も「優秀な人たちが、焦って信用取引に手を出してしまい、破産するのを何人も見てきた」と述懐しています。

今回の記事をまとめます。

人間は誰しも「お金についての愚かさ」の種子を大量に持った状態で生まれてくる。最も賢い人が大きな資産を築けるのではない。最も愚かさを沢山避ける事ができた人が大きな資産にたどり着くのだ。

愚かさの具体例

① 株価が大きく下がると怖くなって売りたくなること。

株価下落時は、むしろ買い増すのが合理的で正しい。市場はいつか必ず回復し、爆発的大上昇(稲妻が輝く時)を迎えます。米国株市場平均の過去 225年間に渡る歴史を一度ご自分で調べてみましょう。

② 焦って速く金持ちになろうとすること。

インデックス長期投資家の戦略は市場全体の成長に乘ることです。そして、いついかなる時に大暴落が来ても大丈夫なように備えることです。ここで言う「備える」とは、絶対にレバレッジを使わず、現物買いのみに徹することです。人は人。自分は自分。決して焦らないことです。愚かな競争心は長期投資家にとって極めて毒性の強い有害物であると心得ましょう。

いかがでしたでしょうか。「お金についての愚かさ」はまだまだ沢山あります。ぜひ、あなたも「ほかにどんな愚かさがあるだろう?」と一度考えてみてください。投資家としての自分を磨くことは、人間としての自分を磨くことでもあります。健闘を祈ります。

(文: UEDA / 挿絵:KATO )

(※1)チャーリー・マンガー(1924年〜2023年):ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの副会長


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP