この題名を一目見て、あなたはどう思われたでしょうか? もしも万が一にも「そんな日なんか、来るわけないやん!」と反射的・直感的に思われたのなら、あなたの危機意識はあまりにも低すぎると言わざるを得ません。あなたが確信するその直感( = そんな日は絶対に来ないという直感)に反して、新卒の初任給が100万円を越える日は必ず来ます。100%来ます。
そうです。私はインフレの話をしているのです。
話を続けます。いつの日か新卒の初任給は 100万円を越える。しかしそうなった時には、カップヌードルの値段はひとつ 1,000円以上するはずです。スマホはざっくり1台 70万円から120万円ほどになっているでしょう。つまり日本円の実質価値が現在の5分の1に下がったらそうなるということです。これは短期的にはなかなか起こらないとは思いますが、長期的には100%確実であり、単なる時間の問題です。
「日本円の価値が今の5分の1だって? 極端なこと言いやがって!」と思われたでしょうか? 確かに、日本円の価値が現在の5分の1になるためには、平均インフレ率が年3%の場合は約55年かかります。でも平均インフレ率が年4%の場合は約41年でそうなります。年5%の場合は約33年、年6%の場合は約28年、7%なら約24年、8%なら約21年、9%なら18年半ほどで日本円の価値( = 購買力)は、今現在の5分の1に落ちます。
ちなみに、わが国では1970年代の10年間の平均インフレ率が年9%でした。この当時、新聞やラジオやテレビなどのマスコミは、延々と上昇し続ける物価を『狂乱物価』と名付けました。だから以上のシミュレーションは決して絵空事ではありません。
以下の企業物価指数の長期のグラフを見てみると、物価が上昇した時 = お金の価値が下がる時は比較的集中して、つまりある年を境に十年間程度連続してお金の価値が大きく下落し続けた様子がはっきりと見てとれます。これは日常の生活感覚的には「物価の急上昇」が数年間〜十数年間連続して続くという現象として現れます。

日本銀行のデータより
以上のように、インフレという名の静かな殺し屋は、あなたの命の次に大切な現金や預貯金の購買力をゆっくりと静かに、しかし長期的には確実に、しかもごっそりと破壊していきます。
次のチャートは、過去5年間のドル円相場の様子です。

このチャートの始値は、2020年12月5日の1ドル104.12円です。
このチャートの終値は、2025年12月5日の1ドル154.80円です。
この数値から計算すると(154.80 ÷ 104.12 = 1.4867)5年間で米ドルは日本円に対してプラス 48.67%上昇したことが分かります。ほぼ1.5倍ですね。また、米ドルから見て日本円は(104.12 ÷ 154.80 = 0.6726 & 1 – 0.6726 = 0.3274)32.74%価値が下がったわけです。つまりたった5年間でほぼ3分の1の価値が失われたことになります。
「やはり米ドルが一番!」ってことでしょうか? いえいえ、とんでもない。米ドルの価値の落ち方もかなりのものです。次のチャートをご覧ください。これは、1990年から2025年までの米ドルの購買力平価の推移を表したグラフです。

米国連邦準備銀行経済データより
2000年のあたりをご覧ください。このあたりの数値は、ざっくり 60ポイントくらいですかね。そして最後の 2025年では、ざっくり 30ポイントくらいになっているのが読み取れますでしょうか。つまり、米ドルは 2000年代に入ってから今までの間に、その購買力はほぼ半分になったということです。
米ドルはこのチャートから一目瞭然なように、着実に価値( = 購買力)を落とし続けています。しかし日本円はその米ドルよりもさらに輪をかけて価値を落とし続けていることが、過去5年間のドル円相場のチャートから読み取れましたよね。この調子で行けばひょっとして新卒の初任給が100万円を越える日も、思ってたよりかなり早く訪れるかも知れません。
大切なことは、今回の記事が示す各種のリアルなデータを何度もよくご覧になることです。そして、今現在まさに進行中のインフレを、正しく客観的に冷静に真正面から直視しましょう。その上で、あなたの大切な資産の今後の運用の方向性をじっくりとお考えになってください。この記事が、未来のあなたの資産がリアルに増大することに少しでも貢献できたなら幸いです。
(文: UEDA / 挿絵:αβγ)

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