第100回 時代が大きく動く時、自国通貨を信じ過ぎた者は滅びる


時代が大きく動く時。

世の中のいかなる人も(早逝しない限り)その長い一生の間に必ず一度はその時に遭遇します。ものすごくご長寿な人なら一生に複数回遭遇する人もいらっしゃるかも知れません。

そして、その運命の時には、その人その人の資産の有り様によって、まさしく経済的な生死が分かれます。

時代が大きく動く時、

自国通貨を信じすぎた者は滅びる。

これが今回のテーマです。

2025年12月現在、日本は依然として低金利政策を続けています。それが必ずしも悪い事であるとは言いません。おそらく諸般の事情から、そうせざるを得ないのだろうと推察いたします。

しかし、その行き着く先は論理的に推定できます。私たちの自国通貨( = 日本円)の信任が危機を迎えるということです。きっかけは南海トラフ地震かも知れないし、たとえそういう分かりやすいきっかけが無くとも、爆発のエネルギーは日々蓄えられ続けています。

さて、私たちがその価値を信じて、日々使っているこの『日本円』は、世界と私たち日本国民とが信任しているからこそ価値が保たれています。

たとえば株式には、企業の所有権としてのはっきりとした価値が存在します。ゴールドには、それ自体が価値であると5千年以上昔から、世界中のすべての地域で、すべての時代で、すべての人類から認められ続けて来ました。

しかし、我が国の通貨日本円には、、、実ははっきりとした価値の保証など何も存在しないのです。言わばみんなが「1万円札には1万円分の価値がある」と信じ込んでいるから1万円の価値がある、というような、まるで禅問答あるいは手品のような存在、それが私たちの『日本円』の正体なのです。しかも政府日銀がその気になれば、いくらでも大量に印刷し、無制限に発行することのできる、単なる(大量生産対応型)印刷物に過ぎないのです。もちろんこういった事情は世界中のいかなる国家の法定通貨も同じですが。

ちなみに余談ですが、日本銀行で長年勤務して定年退官を迎えたある幹部クラスだった人は、日本円でもらった退職金をすぐに全額ゴールド現物に変えたそうです。おそらく彼は在任中に、いかに『日本円』がとてつもない勢いで増刷され続けているかを目の当たりにして、「こんな無制限にも等しい勢いで印刷され続けている紙切れ(1万円札のこと)など信用できん!」と思ったのではないでしょうか。

話を戻します。このように世界と国民に深く信じられることによって信任されてきた通貨が、ある日を境にその信任を失う事例など、人類の歴史において枚挙にいとまがありません。今現在も(トルコ・リラなど)世界中には(ある日を境に)信任を失った通貨がリアルタイムで価値が暴落し続けている事例も、これまた枚挙にいとまがありません。

わが日本国の過去を振り返って見てみますと、まず1945年に敗戦した時、その時は訪れました。この時は紙幣も国債も一瞬で紙屑になりました。また我が国初の大阪万博が行われた1970年代には石油ショックをきっかけに「狂乱物価」と呼ばれる約10年間にも及ぶ物価高騰が連続した時代がありました。この間に日本円の価値は大きく大きく下落しました。この大インフレ時代もまさにその時だったわけです。

そして私たちは現在、1989年以来30年間にも及んだ長期のデフレ時代を経て、2020年あたりから徐々に大インフレ時代に入りつつあります。

日本銀行が印刷する1万円札の発行済み数量は、ここ数年加速度的に激増しており、歴史上かつてなかった規模にまで大膨張しています。見方によっては歴史的なレベル、未曾有のスケールでの1万円札の大乱発が今まさにリアルタイムで行われている、と受け取れなくもないですね。

とはいえ、私は日本銀行のこのような行為について論評するつもりは全くありません。正しいのか間違っているのか正直私にはわかりません。しかし、今のこの状況から論理的・必然的に導かれ得る帰結については、

皆様、必ず前もって備えておきましょう!

と、声を大にしてあなたにお知らせしたい。警鐘を打ち鳴らしたい。これこそが私の今回の記事の趣旨であり目的です。

さて、自国の通貨の信任が危機を迎えた時、どのような資産を持っていた人が経済的に生き残れたのか。あるいは生き残れなかったのか。これについては、すでに歴史上のあらゆる事例、あるいは今現在この地球上に実在しているあらゆる地域の事例から、実はすでに明らかです。

以下にそれぞれお示しいたします。

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①自国通貨(日本円)を預貯金で持っている人々

つまり、ご自分の金融資産のほとんどを、銀行預金や郵便貯金にしている人々。これらの人々は即死、全滅です。

②外貨預金を持っている人々

これは生き残りますが、あくまでも生き残るのは外貨預金だけです。そしてご自分の財産のほとんどを外貨預金にしている人は(たぶん)少ないのではないでしょうか。

③国内債権を持っている人々

すなわち国債や、国内企業の社債でご自分の財産を保持して利息を得ている人々。このような人々も全滅です。別にデフォルトなんかしなくても「円」自体の価値が紙屑化するので、「円」表示の額面で価値を保証する国内債券も同様に紙屑化します。もちろん債券の利回り自体はその時にはたぶん大きく上昇しますが、インフレが必ずそれを飲み込む(さらに大きく上回る)ので生き残れません。

④海外債権を持っていた人々

どの国の債券かにもよりますが、米国債なら生き残るでしょう。

⑤不動産を持っていた人々

これは私は専門外なので正直よくわからないのですが、都心の不動産のような外国人からニーズのある不動産をお持ちの方は、もちろん生き残るし、むしろ資産を大いに増やせると思います。しかし地方の不動産だと、国内需要の低迷による空室率の増加や、売ろうとしてもなかなか売れない可能性も大いに考えられます。さらに不動産賃貸業の場合、ゆるやかなインフレなら家賃・賃料の値上げで対応可能ですが、急激なインフレには事実上対応は不可能です。家賃・賃料収入は日本円。日本円の価値が日々連続的に低下し紙屑化し続けるのです。これに対応するには家賃・賃料を(最低でも)毎月値上げし続けるしかありませんが、家賃・賃料の毎月値上げなど現実的には実行不可能だからです。不動産賃貸業はその時、事実上持ち出しのボランティア事業となり果ててしまい、あなたの資産を残酷に削り続けるでしょう。

⑥日本株を持っている人々

これは助かる人と助からない人に別れると思います。その時、日本国内の経済は混乱して内需が大きく落ち込むことが予想されます。したがって、国内向けに商売をしている企業は存続が危うくなるかもしれません。海外向けに商売している優良大企業の株はもちろん良いと思われます。とは言え、トータルとしての日経平均やTOPIXは、仮に円ベースでは史上最高値を更新したとしても、ドルベースで見ると暴落しているという可能性が大いにあり得る(現にトルコの株式市場のイスタンブール100インデックスはそう)ことは、必ず想定すべきだと私は思います。

⑦米国株を持っている人々

優良な米国株式あるいは米国株インデックスを持っている人々は、これは(もちろん、もちろん)思い切り生き残ります。のみならず大きく資産を増やすでしょう。

⑧ゴールドを持っている人々

こちらも(もちろん、もちろん)思い切り生き残り組です。のみならず大きく資産を増やすでしょう。

⑨仮想通貨を持っている人々

例えばビットコインなら、価値を大いに保ちますので生き残れるはずです。のみならず大いに資産を増やせる可能性が高い。ただし仮想通貨は政府が規制しやすいので、すべてをこれに賭けるのは危険だと思います。価格変動が激しすぎるのも不安要因です。

番外その1:住宅ローンを持っている人々

固定金利ならなかなか良い感じです。変動金利なら即死です。固定金利の場合、返済額は変化しませんから、インフレにより返済額の実質価値は減る一方です。インフレが進むと一般的には給料も上がりますから、時間が経つにつれ返済は加速度的に楽になっていくでしょう。反対に変動金利は地獄です。金利が急上昇し、毎月の返済額はとんでもない金額に膨れ上がっていくでしょう。給料が増えたとしても返済額の増加速度のほうが遥かに速いので、瞬く間に破綻して家を取られてしまうでしょう。ただ固定金利の人も安泰ではありません。もしも、それなりの規模の米国株インデックス等を別に持っていなかったとしたら、高インフレによって生活が破綻するのはまず免(まぬか)れないでしょう。

番外その2:何も持っていない人々

さて、一応念のために言っておくと、何も持っていない人々は最初から全滅です。その時には給料も必ず上がるはずではあります。しかし物価はさらにもっと(先行して)上がります。もらえる給料は金額としてはどんどん増えていくのに、買える物はどんどん少なくなっていく。毎日の生活物資が日々恐ろしい勢いで値上がりしていくのを目撃するでしょう。今月もらった給料が翌月になれば購買力が半分になっている。でも給料は毎月は上がらない。こんな地獄のような体験をするでしょう。

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いかがでしたでしょうか?

その時、大多数の人々つまりご自分の財産のほとんどを銀行や郵便局などの預貯金で持っていた人々は、その財産のほとんどを失います。一方で円資産以外のもの、すなわち米国株などの海外資産やゴールドなどで持っていた人々は財産を保ち、むしろ大きく増やすでしょう。そしてその増えた潤沢な資金を利用して、値段がガタ落ちになった国内の優良資産・優良物件を大バーゲンセール価格で買い集めることだってできるでしょう。つまり資産の勝ち組と負け組の差が(今よりもはるかに)圧倒的に拡大する。何をきっかけにその時が来るかについては、また後日お話ししたいと思います。複数ありますが、例えば南海トラフ地震が起こればほぼ確実にその時が来ます。

時代が大きく動く時、

自国通貨を信じ過ぎた者は滅びる。

ぜひ肝に銘じてください。長い人類の歴史の中で何度も何度も繰り返されて来た不変の教訓です。くれぐれも絶対に忘れないでくださいね。

(文: UEDA / 挿絵:αβγ)


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