第107回 暴落に備えて「株式ポジションを落とす」は正しいか

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投資の神様ウォーレン・バフェット氏は「株式市場が明らかに加熱している」と判断すると、株式を徐々に売って現金ポジションを増やす事で有名です。その判断力と実行力は実に天才的と言うほかなく、彼が長年にわたって S&P500 のパフォーマンスを大きく上回り続けて来た沢山の理由の中のひとつと言えるでしょう。先月のブルームバーグの記事も、

著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイでは、現金保有額が7-9月(第3四半期)に3817億ドル(約58兆7800億円)に急増。過去最高を記録した。

(Bloomberg 2025年11月2日)

と、報じていました。

ならば私たちインデックス投資家も、彼を見習って株式市場の加熱を判断した場合(たとえば今)は、暴落に備えて「株式ポジションを落とす」=「現金ポジションを増やす」べきなのでしょうか? これについての私の答は「否(いな)」です。おそらく他ならぬバフェット氏ご本人が、私たちが彼の真似をすることを必ず否定なさるでしょう。なぜでしょうか?

バフェット氏であれ誰であれ、株式ポジションを落として現金ポジションを大きくするからには、大きな機会損失を免(まぬか)れません。にも関わらずバフェット氏が最終的に S&P500 を上回るパフォーマンスを叩き出せるのは、彼がインデックス投資家ではなく、あくまでも天才的な個別株投資家だからであり、いつかついに来た暴落時に超割安になった優良な個別株を的確に選び出し、しかも充分なスケール(資金量)で買う天才的な判断力と行動力を持っているからです。

いかにバフェット氏と言えども(個別株には一切投資せず)インデックス(S&P500 など)にしか投資していなかったとしたら「市場の加熱で売って暴落で買い戻す」という手法をもし何度も繰り返し続けたなら(おそらくさすがの彼でも)長期的には S&P500 のパフォーマンスを下回ってしまう可能性の方が大きいと私は思います。なぜならインデックスの場合、「加熱で売り暴落で買い戻す」と言う手法によってインデックス以上に利益を生み出せる「売りのスィートスポット」も、「買い戻しのスィートスポット」も、ともに極めて狭く、その狭い両方の「スィートスポット」を両方とも的確に捉え、しかも充分に大きい金額分を機動的に売ったり買い戻したりするのは(確率論的にも)至難の業だからです。間違いなく毎回当たり外れが出る。しかもバフェット氏は普段から、ご自身の「タイミング」を計る能力を明確に否定されています。

私たちインデックス投資家が、もしもバフェット氏の真似をして「株式市場が加熱しているから」と株式ポジションを落として現金ポジションを増やしたりすると、いたずらに「自らの運用資産の長期的パフォーマンスがインデックスを下回ってしまう」危険を増すだけであり、たとえ仮に上手くいったとしても大したプラスアルファの利益など出ない。つまり、トータルとしてほとんど意味がなくむしろ有害ですらある行為である、と言うことがお分かりいただけたでしょうか。

私たちインデックス投資家にとっての正解とは何か? それは、株式市場が加熱しようが、大暴落しようが、天が落ちようが、地が裂けようが、ただただひたすら

動かざる事、山の如(ごと)し

明らかにこれしかないのです。必ず肝に銘じておいてください。

(文: UEDA / 挿絵:αβγ)


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