第43回 純資産1千万円とマイナス1千万円。あなたはどっちを選ぶ?


純資産とは資産から負債を引いたものです。さて以下のAB二つの状況の中から必ずどちらかを選ばねばならないとしたら、あなたならどっちを選びますか?

A:手元に1千万円あって借金はゼロ。この結果純資産は1千万円。

B:手元に1億1千万円あるけど借金が1億2千万円あるこの結果純資産はマイナス1千万円。

世の中の大多数の人々は「借金は怖い」と思っているでしょうから、ほぼAを選ぶのではないでしょうか。しかし中にはBを選ぶ変わり者もいます。かく言う私も断然B派です。私ならとりあえず、この借金がどのような契約になっているかをまず確認するでしょうね。

そしてもしも1億2千万円の借金の契約内容が、35年の住宅ローン並みの返済計画および金利であれば、私なら100%絶対の自信と確信を持ってBを選びます!

ローンの返済方法はいろんな手が考えられますね。たとえば1千万円を手元に残して、残り1億円は楽天証券に送金。全部ドル転してVOO(S&P500に連動するETF)を全力買いする。そして手元にある1千万円で当面(2年間くらい)返済して投資分の成長を待つ。

あるいは、それなりに稼ぎがあって頑張って毎月の返済を自分の給料から返せるならもっと安心です。手元の資金を使う事なく自分の稼ぎで返済が可能なら、破綻リスクは極めて低くなります。

S&P500の期待平均年率を10%と仮定すると、1億円は年に1千万円を生み出す計算になります。その次の年は1千100万円、その次の年は1千210万円。もちろん現実にはこの計算通りにはなりません。しかし少なくともこの投資の期待収益は、計算上は以上のような値になる訳です。

Aは借金ゼロで確実に1千万円あります。しかしながら仮にS&P500に全額投資したとしても、計算上の期待収益が年間100万円にしかなりません。これはBの期待収益のたった10分の1です。

Bはスタート時こそ純資産マイナス1千万円ですが、運が良ければ(S&P500のその年のパフォーマンスが + 20%以上なら)最初の1年で純資産がプラス1千万円以上になってAを追い越す可能性があります。

またたとえ、たまたま市場が悪くても、向こう2年間のバッファがあるし、もしも自力返済(働いた給料で返済)ならバッファはもっと長期化し、おそらく数十年間にもおよびます。数十年間もの時間が確保できれば、パフォーマンスはほぼ長期的平均に回帰します。

Bの運用資産は計算上8年後には借金の残額の2倍を越えます。しかしどんなに資産額が増えても、私なら繰り上げ返済など絶対にしませんね(笑)そのまま引き続き毎月返済分だけを返済し続けます。利息を払い続けるのが勿体ない? いやいやいやいや、喜んで利息を払い続けます。当たり前です。借金の利息よりも借金してるお金の運用による収益のほうが遥かに大きいのです!こんな美味し過ぎる借金を、そうそう簡単に全額返済しちゃうような(それこそ)勿体ない真似を、私がするわけがありません!(笑)

Bの状況で借金を返済し終わる35年後、Bにおける運用資産額は計算上28億1千24万円になります。つまり超富裕層の定義(金融資産5億円)の5倍以上です!

さて、以上の話はあくまでもひとつの思考実験に過ぎません。現実には銀行は株を買うためにはお金は貸してくれません。しかし以上の思考実験の結果は、少し違う現実的なケースに応用することが可能です。

たとえば、今あなたが1億円の現金を保有しているとします。そして、これからあなたは1億円の不動産物件を買う必要があるとします。この時、この不動産を買うのに手元の1億円を使いますか? それとも銀行からお金を借りて支払いますか?

はい。答は、

①銀行が認めてくれる範囲で可能な限りフルローンに近い借り入れをする。

②支払利息の総合計額を最大化させても構わないので、支払い期間をなるべく長く取る。= 毎月の返済額を圧縮して破綻リスクを極力下げる。

③手元資金は、S&P500 に全力投資して運用する。

④繰り上げ返済は原則しない。もしするとしても運用資産が借金の残額の10倍以上に成長してからにする。

⑤当然のことながら借り入れを実行する前に、支払い金利はなるべく低く抑えられるように銀行と交渉する。そのためには最低二つ以上の銀行に相見積もりをさせ競争させる。(←超重要)

以上が(先の思考実験からも明らかな)最も正しい答です。

(文: UEDA / 挿絵:αβγ)


“第43回 純資産1千万円とマイナス1千万円。あなたはどっちを選ぶ?” への2件のフィードバック

  1. […] 少し前に『純資産1千万円とマイナス1千万円。あなたならどっちを選ぶ?』というブログ記事を投稿しました。その反響に私は少々ショックを受けております。 […]

  2. […] たとえば少し前の私のブログ記事「第43回 純資産1千万円とマイナス1千万円。あなたはどっちを選ぶ?」で、うっかりAを選んでしまった人と正しくBを選べた人とでは、その後の人生が全く違って来てしまいます。Aを選んだ人は(かなり大きな確率で)一生庶民で終わるでしょう。Bを選んだ人は(かなり大きな確率で)大した努力もなく早々と超富裕層に到達するでしょう。彼らの経済格差は最終的に軽く1:100以上に開くでしょう。たった一度の『判断』の差によって生まれたこの格差を『努力』のチカラで埋めるのはまず不可能です。 […]

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